駅の楽しみ方:
懐かしくも新しい
丹波のちいき百貨店
2023.03.15
奇跡的な地形、「氷上回廊」で育まれた特産品の数々。
丹波おばあちゃんの里にはそんな豊かな自然の恵みがいっぱい。
「ちいき百貨店」をテーマにした山里の駅では昔ながらの持ち味で、
丹波を盛り上げようと奮闘する姿があった。
大阪方面から北近畿道・舞鶴若狭自動車道を走り、春日ICで降りてすぐ。辿り着いた兵庫県丹波市春日町では、ビニルハウスや水田がのどかに続いていく。近くには篠山城や黒井城など名城跡があり、町には歴史の香りが漂う。その中でも目を引くのが、がっしりとした瓦屋根の建物。里山の中にポツリと佇む道の駅、「丹波おばあちゃんの里」は、まさにおばあちゃんの家のような懐かしさを醸し出している。
駐車場を降りると、公園の大型遊具で遊ぶ子供たちの笑い声が聞こえてくる。隣には広くて開放的な「芝生公園」があり、ファミリーの憩いの場に。
まるでずっと昔から、この町を見守ってきたような、懐かしい雰囲気のおばあちゃんの里だが2006年開業と聞き、意外に最近のことだと驚く。当初は物産館のみの施設だったが、2012年に飲食店を新設。そして2022年3月には物産館と駐車場を大幅に広くし、現在の施設へと一新した。
その他、観光情報センターや屋根付きの渡り廊下、公園の遊具も増設された。EV急速充電設備設置も1基、設置され施設全体が新しくなっている。
おばあちゃんの里を管理している、丹波ふるさと振興株式会社の早形敏樹(はやかたとしき)さんにリニューアルの思いを伺った。
「商品だけ多くしても、お客さんが来てくれなければ意味がありません。だから、思い切って駐車場も一緒に広げることにしたんです」。
リニューアルの際、道の駅が掲げたコンセプトは「ちいき百貨店」になること。ここでいう「百貨店」とはお客さんに、選択肢をたくさん設けているという意味。駐車場と売り場が新しくなったことで、おばあちゃんの里は丹波の豊かな食文化をより満喫できるスポットに。大納言小豆や黒豆、黒枝豆などの名産品はもちろん、和菓子や日本酒といった地元のおみやげも品数が増え、多彩になった。
さらに、道の駅の中ではパンやお惣菜も毎朝調理している。そのため、手作りの味に出会えるのもおばあちゃんの里の魅力のひとつ。
おばあちゃんの里では飲食店にも注目。まず、物産館の入口脇には、ジェラートコーナーの注文口が。ここでは、丹波の食材を使った「こだわりじぇらーと」が人気を集める。
ジェラートコーナーの斜め向かいには、ランチタイムに地元客や観光客が集まる「フードコート」。鶏肉やお米、黒豆など、メニューの食材はいずれも丹波エリアの生産者さんが丹精込めて育ててきた、地場産品。家庭的で飾り気のない料理は、味わうほどに心がほっと落ち着く。まるで、ふるさとで「おばあちゃん」に手料理を振舞われているようなくつろいだ気分に。
ところで、おばあちゃんの里のグルメのモットーは「地産地消」。地域の特産品を地場の水で調理し、地元で食べてもらう(消費してもらう)。この思いに、道の駅から特産品への誇りが窺える。
丹波の豊饒な食文化を育んできたのは「氷上回廊」という地形。春日町は、山地の真ん中を貫く低地帯のルート、氷上回廊の途上にある。氷期には冷え込むのに対し、間氷期の気候が暖かいのはその地形の特徴。山間部で珍しい低地帯は動植物のオアシスに。加古川と由良川、2つの水源にも恵まれ、丹波では古代から集落が形成されてきたという。この地に寄り集まった人々は農業を営み、多様な作物を栽培してきた。
氷上回廊で紡がれてきた、丹波の人と食の歴史。道の駅という形で、おばあちゃんの里は現代に受け継いでいる。
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