京都のお茶どころ 和束町で抹茶アート体験
2023.11.13 FOOD
京都府南部に位置する和束町は人口4千人未満(※)の小さな町だが、府内で有数のお茶どころだ。町内ではあちこちに茶畑が広がり、春から秋にかけて茶摘みが行われている。特に、「和束茶」と名付けられた高級煎茶や、香り高い抹茶は格別なおいしさ。全国的に知られる「宇治茶」の4割もが和束町で生産されてきた。
鎌倉時代からお茶づくりが始まったといわれる和束町。今、まちおこしの一環として「抹茶アート」の教室が開かれ、観光客に注目されているという。歴史ある和束町のお茶の良さを楽しく伝えてくれる、「抹茶アート」を体験しに行ってきた。
(※)和束町公式ホームページによる。
和束町の観光情報が集められたまちおこしの拠点、〈和束町観光案内所〉。その2階の会議室で、「抹茶アート体験」は不定期的に開催されている。講師を務めるのは、和束町出身の中尾惠美(めぐみ)さん。彼女が「故郷のお茶のおいしさをどうしたら多くの人に伝えられるだろう?」と考え、始めたのがこの教室だ。この日は10人以上の参加者が初めての抹茶アートに期待をふくらませてやって来た。
「抹茶アートはとても簡単です。手順さえわかれば、おうちでもできますよ」と中尾さん。以下、その「簡単」なやり方を紹介(※)。
(※)あくまで「抹茶アート」のための手順なので、抹茶のたて方や作法とは異なる部分があります。
用意するもの
- インク用の抹茶を作る
- 抹茶をたてる
- 絵や文字を描く
中尾さんのレクチャーが終わり、いよいよ実践。茶道経験者から小さな子供まで、抹茶のキャンバスにイラストや文字を描くのに、時間がたつのも忘れて夢中に。
体験を終えた参加者に感想を聞くと、「思っていたより簡単で楽しかったです」「抹茶に絵を描くのが不思議な感覚。上手く線を引けると気持ちがよかったです」とのこと。「今日、和束町に初めて来ました。空気がおいしくて本当にいいところ。それが一番の収穫でした」という人も。
イベントの仕掛け人は〈相楽東部未来づくりセンター〉。京都府南部にある和束町、笠置町、南山城村での地方創生を支援するために発足した団体だ。これまでキャンプ体験やミュージックコンサート、カヌー体験会などを企画し、自然が豊かな各地域の魅力をPRしてきた。メンバーの岡田惠(めぐみ)さんは和束町についてこう語る。
「とても景色に恵まれている場所なので、たくさんの人に足を運んでもらいたいですね。抹茶アート体験のようなイベントをこれからも企画して、地域の観光を盛りあげていけたらと思います」。
「抹茶アート」で出会った和束町のお茶を、より深く味わうにはどこに行けばいいのだろう?中尾さんと岡田さんに尋ねると、〈和束茶カフェ〉を教えてくれた。〈和束町観光案内所〉から徒歩で10分ほどの距離にある、和束茶や抹茶を使ったメニューで人気のお店だ。
スタッフさんのおすすめ、「抹茶アフォガード」とお茶の「3種飲み比べセット」を注文。
抹茶アフォガード
バニラアイスに熱い抹茶をかけてから食べる「抹茶アフォガード」。熱くて苦い抹茶と、冷たくて甘いバニラアイスのコントラストがくせになるスイーツだ。
3種飲み比べセット
和束町産のお茶3種類を一気に楽しめる「3種飲み比べセット」。町を代表する「煎茶」はすっきりした味わいの中にかすかな渋みが香る。「かぶせ茶」は甘みが増して飲みやすい味。その名前は、茶畑に特別な覆いを「かぶせ」て日光を遮り、甘味成分のテアニンを生成させる栽培法に由来する。そして、お茶好きの間で人気上昇中の「和紅茶」は、上品で深いコクが特徴。日本産の茶葉からつくられており、欧風の紅茶よりも香りがはっきりしている。
抹茶アートでは希少な体験で、カフェでは味わい深く、様々なお茶を堪能できる和束町。さらに、農家さんの協力のもと茶摘み体験も随時受け付けているという。そんな和束町の愛称は「桃源郷」ならぬ「茶源郷(ちゃげんきょう)」。美しい自然の中で、お茶とともに有り、息づく町にぴったりの名前だ。イベントやカフェめぐりなどを楽しみながら、ぜひともこの緑豊かなお茶のユートピアを訪れてみてほしい。