みちする

お買い物・グルメ:
越山若水が生んだ
米・野菜・大豆

2023.10.04

越前の豊かな大地と、若狭湾へとつながる清流。これらの福井県の風土は「越山若水(えつざんじゃくすい)」と表現され、米や野菜づくりに適していると称えられてきた。〈さかい〉の併設施設〈いねす〉でも、地場産の米コーナーは大人気。さらに、大豆からできる豆腐や味噌、厚揚げなども自前の工房でつくって販売している。福井県の自然が生んだ食の数々を〈いねす〉の〈農産直売所〉と〈味処けやき〉で味わってみて。

おすすめのおみやげ①農産物

〈農産直売所〉にずらりと並べられた白米と玄米の米俵と米袋は坂井市産100%にこだわった、福井県を代表する米たちだ。注目は全国的に知られた「コシヒカリ」。1944年に新潟県で「農林22号」と「農林1号」を交配させた後、福井県坂井市でその米を系統育成し、「コシヒカリ」は誕生した。そのため、坂井市を「コシヒカリのふるさと」と言う人は多い。 つやのある粒にほどよい粘り気、炊きあがると増す甘みなど、「コシヒカリ」はうるち米の長所が凝縮された品種。坂井市を訪れたならぜひとも地元の「コシヒカリ」を買って帰りたい。

そのほか、2017年に品種登録出願したばかりの「いちほまれ」も福井県で生まれた米。「毎日食べたいお米」を目指し6年かけて開発された「ポストコシヒカリ」を担う品種だ。やわらかさと甘さ、つぶの食感のバランスが絶妙で、2018年には〈日本穀物検定協会〉の食味ランキングにて「特A」の評価を受けている。

2018年に農研機構が開発した「にじのきらめき」も無視できない。「地球温暖化が進む中でもおいしく食べられる米」をテーマにしており、高温や病気に強いことから福井県の農家の間で広まりつつある。つぶの大きさともっちりした食感が特徴だ。

〈農産直売所〉ではお客さんの要望に応じて、その場で精米するサービスも実施している。

米以外の野菜・果物も充実している〈農産直売所〉。多種多様な農作物が坂井市で栽培されているのは、このエリアが平野で水はけに優れているからだ。土には養分がしみわたり、新鮮な空気が常に入り込んでくる。その結果、ねぎや白菜などの葉野菜は大きく育ち、味も甘い。メロンやすいかなどの大玉フルーツも道の駅でファンを増やしている。

収穫までに時間がかかる白ねぎ。それだけに茎は太く、味は濃厚になる。
食べやすいカットフルーツや詰め合わせセットなどもあり、ギフト選びにも利用しやすい。

おすすめのおみやげ②大豆食品

豆腐、味噌、厚揚げのコーナーには、〈坂井地域交流センター〉内の工房でつくられたものが数多く置かれている。これらの原材料になっているのは、坂井市産の大豆。福井県は近畿地方最大の大豆の産地(※1)。さらに、九頭竜川をはじめとするきれいな水源を利用して、大豆の加工品も積極的に生み出してきた。たとえば、坂井市の隣の福井市は、60年連続で「油揚げ・がんもどき」の一世帯当たりの年間支出額が日本一(※2)。〈農産直売所〉はこうした福井県の食文化の宝庫だ。

(※1)農林水産省「作物統計」による。

(※2)総務省2022年「家計調査」による。

コーナーの壁にはできあがりの時刻が書かれた貼り紙が。その時間に合わせてスタッフさんが厚揚げを工房で揚げている。

揚げたての厚揚げは外側がカリカリ、中身はふわふわ。最高においしい状態の厚揚げを求めて、時間近くに待ち構えているお客さんもたくさんいるとか。

豆腐にも道の駅のオリジナル品がある。おからも置いていて、昔ながらの豆腐屋さんのよう。
〈さかい〉の高嶋駅長が味噌の貯蔵庫に案内してくれた。味噌の桶はここで熟成するまで大切に管理される。
売り場に届けられた〈いねす〉の味噌。大豆と「コシヒカリ」を合わせて深い旨みが生まれている。

おすすめのおみやげ③地元生産者さんの手づくりお菓子

そして、〈農産直売所〉には坂井市の農家さんたちがつくった、手づくりのお菓子、食品にも出合える。どれも無添加、無着色のやさしい味。たとえば、東尋坊の近くの農家さんがつくった「菊芋チップ」は、一口食べたら止まらなくなるこうばしさ。そもそもはアメリカ先住民が育てていた菊芋は、江戸時代末期、日本に伝来したとされる。その後も生産量は少ないものの、国産の菊芋は北海道や九州で栽培されてきた。そして近年、食物繊維が多いことが引き金になり、、健康食品として見直され始めている。まずはお手軽に「菊芋チップ」のサクサクの食感から試してみてほしい。

日本海側ではなじみのある「打豆」もおすすめだ。冬は雪に閉時込められてしまう地方では、春までの間をしのぐための保存食が発達した。そのひとつである「打豆」は大豆を水でもどした後すりつぶし、小さいかけらにして乾燥させたもの。味噌汁の具材にするのが定番だが、酢のものや煮物にも使われている。大豆そのものを加熱するよりも歯応えがあり、料理のアクセントにぴったりだ。

地元の農家さんたちがお米からつくった「かきもち」も売り場に。近畿北部から北陸にかけての伝統のお菓子だ。
生にんにくを熟成発酵させた黒にんにく。滋養強壮にいいとされ坂井市の多くの農家さんが手づくりに挑戦している。

ドライブや観光の途中にランチを求めて〈さかい〉に寄る人たちも多い。〈味処けやき〉は、坂井市産の食材をたっぷり堪能できるレストランだ。

〈味処けやき〉のメニュー①いねす手作り厚揚げ定食

いねす手作り厚揚げ定食 1,000円。

〈味処けやき〉では、〈いねす〉の工房でつくられた厚揚げや味噌が料理に使われている。「いねす手作り厚揚げ定食」はおすすめの地産地消グルメ。ボリュームたっぷりでふっくらした厚揚げはその日の揚げたてだ。そこに器からあふれるほどのかつおぶしと大根おろしを乗せて、上からかつおだしをかける。大豆の風味が存分に引き出された食べ方で、自然にごはんがすすむ。もちろん、定食のごはんも坂井市産の「コシヒカリ」だ。ちりめん山椒やこんぶの佃煮など、福井県の郷土料理が小鉢で添えられているのもうれしい。

福井県の食卓ではかつおだしが定番。さっぱりした味で厚揚げ自体の味を際立たせる。

〈味処けやき〉のメニュー②海鮮丼

福井県の魚を中心に、旬の海鮮類を「コシヒカリ」に盛り付けた「海鮮丼」(1,600円)。

その時期に旬を迎えている海鮮類を贅沢に盛り付けた「海鮮丼」。福井県名産のたい、いかのほか、まぐろやぶり、甘えび、しらすなどが丼を鮮やかに彩る。その日の朝に水揚げされたばかりの魚の刺身の引き締まった食感がたまらない。東尋坊で魚やかにをしっかり味わってきた観光客が帰り道に、さらに〈味処けやき〉の「海鮮丼」を頼むことも多いそう。ここの海鮮のおいしさを証明するエピソードだ。

〈さかい〉〈いねす〉で印象的だったのは、厚揚げコーナーでのワンシーンだ。きつね色に染まった厚揚げを持ってスタッフさんが「できましたよ」と周りに呼びかけると、お客さんたちがたちまち集まってきた。そして、次々に買い物かごへと厚揚げを入れていく。
名産の大豆を使った揚げたての厚揚げは、坂井市の越山若水が育んだ特別な食品。それが地元の人々の日常に溶け込んでいる。地方の特産品や郷土文化がそこで暮らす人たちの中にしっかり根付き、これからも受け継がれていく。そしてそれが、外の人に認知され、外へ外へと広がっていく。道の駅が地域の拠点であることをあらためて感じることができた貴重な時間だった。

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