みちする

どんな駅?:
ニコイチで地方創生
癒しのさかいと
地産地消のいねす

2023.10.04

福井県嶺北地方に広がる福井平野は、県内の面積の4分の1に相当する。そんな広大な福井平野の中でも、特に農業が盛んな九頭竜川下流域の平地部を坂井平野と呼ぶ。坂井平野の農地の大半は水田に利用され、米どころである福井県の稲作を支えてきた。そんな坂井平野の中央部に位置する坂井市は人口約8万7000人で、福井市に次ぐ県内の第二都市。坂井市の「コシヒカリ」の生産高は県内最大、花らっきょう(「花らっきょ」ともいう) の生産高は日本最大だ。

近畿地方でも有数の活発な農業地帯、坂井市にある〈道の駅 さかい〉と〈坂井市地域交流センター〉、通称〈いねす〉は2001年に休憩所・観光案内として開駅。巨大な柱状節理(ちゅうじょうせつり)で有名な東尋坊がある越前加賀海岸国定公園から近いため、観光客が休憩や車中泊に〈さかい〉を利用するようになった。そして、〈さかい〉〈いねす〉坂井市の豊かな農作物の発信にも力を注いできた。〈いねす〉の販売所では特産品の米はもちろん、豆腐や味噌、油揚げなどの大豆食品が人気。さらに、販売所の中でつくられた厚揚げは、レストラン〈味処けやき〉のメニューとしても登場する。

買い物と食事で、坂井市の魅力があふれている〈さかい〉〈いねす〉は農業にまつわる郷土文化を継承しようという意気込みもみなぎっている。道の駅の前に展示された巨大で精巧なかかしたちは、「さかい夏祭り」のコンテストでの入賞作品だ。

まちの農業パワーがみなぎる〈さかい〉の施設を詳しく紹介。

農産物直売所

坂井市内の農家さんが育てている朝採れ野菜・果物が集められた〈いねす〉の〈農産物直売所〉。玄関を入ると真っ先に、フルーツコーナーの甘い香りが出迎えてくれる。夏から秋にかけてはメロン、すいか、桃などが棚にずらり。そして、冬から春にかけてはかきやいちごがお客さんに愛されている。野菜ではごぼう、じゃがいも、ねぎなど、家庭の献立で使いやすいものが目立つ。鮮度抜群の青果類は、午前中で売り切れてしまうことも珍しくない。

米コーナーに目を移すと、福井名物「コシヒカリ」「いちほまれ」などの米袋が高く積まれている。福井県が米どころとして発展したのは、福井平野に代表される「土地の広さ」が要因。県内のほとんどが凸凹の少ない穏やかな地形なので、水田づくりに適していた。さらに、稲作には欠かせない水源も福井県にはたっぷり。特に、県内最長にして最大面積の九頭竜川の清流は、米の品質に大きく影響している。これらの好条件に加え、福井県の北部にある坂井市は積雪量が多いため、冬の間も大地が潤う。農家さんは万全の状態の土で夏の田植えを行えるので、秋にはおいしい米が大量に実る。「土地」と「水」の両方に恵まれた坂井市の米を、ぜひとも〈さかい〉でチェックしてみて。

米と同じく大豆も坂井市の名産品。大豆を使った豆腐や厚揚げ、味噌は〈さかい〉の工房で加工されている。

交流センター

坂井市民の憩いの場としてつくられた〈いねす〉の〈交流センター〉には、ハーブ教室や絵手紙ワークショップなどが開催されてきた〈たくみ工房〉、企業説明会や会議に利用できる〈研修室〉などが設けられている。〈展示室〉は地元写真愛好家や書道・絵画サークルなどの作品展示スペースとして活用されている。

円天井が印象的な〈交流センター〉の情報ロビーは市内の行事や観光地を探せる〈情報センター〉になっている。

また、館内では「コシヒカリ100%」の定食メニューが魅力のレストラン〈味処けやき〉もあり、お昼時には多くのお客さんが訪れる。「コシヒカリ」は館内の〈農産物直売所〉の中で精米されたもので、食材の野菜、魚などにも地元産が多い。〈いねす〉でつくられた豆腐や味噌を料理で味わうこともできる。まさに道の駅ならではの「地産地消」()だ。

(※)地場産品をその土地で消費するということ。

〈味処けやき〉には40席が用意されている。座敷もあって、店内では開放感の中でゆったりくつろげる。
玄関前に掲げられていた〈いねす〉の語源。「稲」の複数形と「いいです」を組み合わせた造語とのこと。

スタッフの言葉

「坂井市に住むお年寄りのために、農産物の移動販売所を始められたら」と釣部店長は抱負を掲げてくれた。

農産物直売所の釣部店長によると、「農業によるまちおこし」は道の駅のコンセプトだという。

「道の駅〈さかい〉は休憩所と観光案内だけの施設で併設する〈いねす〉(直売所や飲食店)とまとめて〈道の駅〉と呼んでいます。〈さかい〉も〈いねす〉も農業で坂井市を盛り上げたいという思いは同じ。私たちに賛同してくれる地元の農家さんたちと一丸になって、年中、旬の農作物を提供できるように努力しています」。

道の駅の始まりからあった休憩所。今でもドライバーたちが一息つくために立ち寄っていく。

釣部店長の願いは「地域密着型の道の駅として、たくさんの人に愛される」こと。そして、ここでいう「地域密着の形」は、坂井市の農業を応援することだ。坂井市は年間の農業産出額が100億円前後で、福井県内ではトップクラス()。つまり、農業が盛り上がれば坂井市全体が暮らしやすくなる。近年では、Iターン組の支援にも積極的だという〈さかい〉〈いねす〉。ぜひ訪れて、新鮮な農産物やおいしいグルメを楽しんでほしい。そして、まちおこしに全力を注ぐ人たちの熱意と誇りを感じとってもらいたい。

(※)農林水産省「令和3年市町村別農業産出額」参照

おまけ:かかしギャラリー

〈さかい〉の敷地内の建物で、ガラス越しに展示されているのは「さかい夏祭り」のかかしコンテスト入賞作品。また、坂井市内の交差点や田畑などにも、ユニークな巨大かかしたちが立っている。〈さかい〉に来たら、そこから市内のかかし巡りをしてみるのもおすすめだ。のどかな田園風景の中で、突然現れる力士や水牛のかかしはインパクト大!

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