みちする

駅の楽しみ方:
山陰道を明るく灯す
現代の「郡部駅」
(ぐべのえき)

2023.10.02

近畿地方北部から島根県までをつなぐ山間部のルートが「山陰道」と呼ばれていたのは、日本が五畿七道に分かれて統治されていた奈良・平安時代ごろのこと。狭くて険しい山陰道を歩くのは、長旅に慣れた行商人にすら至難の業だったという。そこで、道中には「郡部駅(ぐべのえき)」という休憩所があちこちに置かれ、旅人の宿泊や休養、食事をはじめいろいろなものの補給に利用されていた。
かつての山陰道の上、県道104号物部藪崎線沿いに立つ兵庫県養父市の〈道の駅やぶ〉はまるで現代の群部駅(ぐべのえき)だ。1994年に道の駅登録された〈やぶ〉は長い山道における貴重な食事どころ。豪華な季節のプレート、からあげや油そばなどのスタミナ料理、パンやベーグルなどの軽食ほか、豊富なメニューが揃っている。さらに建物の景観も魅力で、ヨーロッパ風のレトロモダンなビジュアルがドライバーを明るい気分にさせてきた。
これらの〈やぶ〉の外観の特色は、2020年4月のリニューアルオープン時に企画、完成後イメージとして際立つようになった。華やかな雰囲気に惹かれ、女性や若者のお客も増えてきたという。なお、看板にも書かれている〈COINOVA VILLAGE〉は、養父市内で鯉養殖が盛んだったことに由来する。「COI(鯉)」に「恋」や「来い」などの意味も重ねて改修時に愛称となった。

その名の通り、訪れたら恋せずにはいられない〈やぶ〉、その施設を詳しく紹介。

施設①ベーカリーカフェ

香ばしい匂いが漂ってくる〈ベーカリーカフェ〉。毎朝、道の駅内の工房で焼いた、焼き立てのパンが並ぶ。王道の食パンのほか、果物入りのデニッシュやベーグルなどのふんわり食感が人気だ。そのおいしさが口コミで広がり、地元民の朝食やランチの定番になったのは言うまでもなく、市外からこれを目当てに訪れる人も多い。買ったばかりのパンは、持ち帰るのもよし。カフェスペースでコーヒーや紅茶、ソフトドリンクと一緒にじっくり味わうのもよし。

市外からもパンを目当てに通うお客さんも。
パンのすぐそばの棚には但馬地方のおみやげがずらりと並ぶ。

施設②レストラン

落ち着いた木造のインテリアが印象的なレストランでは、ハンバーグやステーキ丼、ビフカツプレートなどのジューシーな肉料理が愛されてきた。また、地元で採れる旬の野菜をふんだんに取り入れているのもうれしい。おすすめは、10種類以上の肉、海鮮、野菜料理を一斉に楽しめる「季節のリトル・ビッグプレート」。新メニューも次々に誕生しているので、何度来ても新鮮な驚きがある。

施設③油そば

〈やぶ〉がリニューアルした際、最初に移転してきた店舗がこの〈油そば〉だった。その味のポイントは酸味を効かせたタレとコシのある麺の組み合わせで、昼時のドライバーたちの食欲を満たす。お米で腹ごしらえをしたい人には、ボリュームたっぷりの牛丼やからあげ丼がぴったり。但馬地方の特産品、ゆずや山椒が隠し味に使われていて、通の舌をもうならせる。

食事どきやティータイムに利用しやすい〈COINOVA VILLAGE〉こと〈道の駅 やぶ〉。足を運ぶたびにおいしくて「濃い」時間を過ごせそうだ。

おまけ

道の駅の池では美しく人懐っこい鯉が人気者。エサを購入し手餌付けもできる。鯉が名産のここならではの体験。(※)

(※)エサの販売は4月下旬~11月下旬の期間限定です。

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