みちする

ひと:
アグリパーク竜王に
息づく近江商人のDNA

2023.01.04

食品の製造、イベントや土産品の企画。
これらを担うのが明るくパワフルな女性スタッフのみなさん。
そのマルチな活躍ぶりはまるでワンダーウーマン。
さらに周辺のいちご農園をたずねるとエネルギッシュなUターンの農場経営者が。
アグリパーク竜王には、開拓精神旺盛な近江商人のスピリットがあふれていた。

「もともと商品POPなどを作るのが好きで、知り合いから『ちょっと手伝って』って誘われ働き始めたんです。それからどんどん担当分野が広がってしまって(笑)」
と話すのは、今回アグリパーク竜王を案内してくださった広報担当の杉本亜希子さん。3児のお母さんながら、5年にわたって広報・運営の柱を担ってきた。イベントの企画や新製品のデザインにも携わる。

愛らしい書体は杉本さんの手によるもの。彼女の活躍を聞きつけた地元情報誌のカバーになったことも。

「デザインは一時プロにお願いしていたこともありました。でも、自分たちで作るのが楽しくて(笑)。ここは、いろんな才能を持つ人が集まる場所なんです。特に主婦のパワーがすごい。ランチタイムにおしゃべりしながら、どんどん新製品の企画が進んだり」
地域と農産品とスタッフのみなさんの才能を結び、新企画やサービス、イベントへとつないでいく。それが杉本さんの大切なお仕事。
「何か面白いことはないか、地元のお祭りと連携できないかとか。竜王は経営陣も周辺の農家のみなさんもパワフルで、次々に新しいビジョンが生まれてくる。正直、仕事はものすごく大変です(笑)。でも皆さんや自分が考えたことをこの規模で形にできるって、なかなかできない経験じゃないですか」

そんな杉本さんが「大切な仲間」と紹介してくださったのが、商品開発部の梅田陽子さん。和漢薬膳師の資格を持ち、道の駅オリジナルの加工食品を企画している食のエキスパート。

竜王レシピでダイエットに成功したという梅田さん。登山が趣味。

梅田さんはこれまでどのようなお仕事を?
「大学を卒業してからは神戸の小売流通企業でマーケティングを学んでいました。それから結婚を機に滋賀に移ってきて、25年経理を担当していました。でも、50歳をきっかけにやりたかった飲食の仕事をしようと決めて。レシピコンテストに入賞し始めていた時期にアグリパーク竜王の面接を受けたら『いい人が来てくれた』って歓迎してもらえて(笑)」

梅田さんが開発した竜ノコバコシリーズのレシピは冊子になっている。道の駅から持ち帰り自由。

彼女を迎え立ち上がったのが商品開発部。薬膳に通じた梅田さんにとって、栄養価の高い竜王の地場産品で商品を考える仕事は天職だったのかもしれない。また会社員時代に培った経理やマーケティングの視点、主婦としての経験が採れすぎてしまった農産品をスピーディに商品化する際に役立った。
「作物を無駄にしないようレシピ開発から製造先をさがすまでが大変で(笑)。でも関係先にちゃんと利益が出るよう、そして私は主婦だから食事は大切にしたい。安心安全で、おいしく買いやすい価格で提供できるように。みなさんが『家族に食べさせたい』と思ってくれる商品を作って提供し続けたいです」

同じく、アグリパーク竜王の「食」で腕を振るうのが、西山穂乃花さん。彼女が担うのは「Berry berry cafe」のメニュー開発。専門学校で製菓の勉強をした後、同じ町内の道の駅 かがみの里に就職。アグリパーク竜王に異動して5年、本格的にスイーツ開発の仕事をスタートさせた。

アグリパーク竜王のデザートは西山さんが担当。

西山さん、メニューづくりの心がけは?
「果物や牛乳など、食材はほぼ竜王産にこだわっています。そして、旬のものを使うことですね」
試作品は多くの人が関わり、完成に近づけていく。杉本さんや梅田さんも貴重なアドバイザーの一員。
「休憩の時間にみんなでただ話していただけなのに、メニュー作りで盛り上がっているときがあるんです(笑)。それがきっかけで新作が生まれたり」

ただ、すべてのメニューがスケジュール通りに開発されていくわけではないようで。
「天候などで農産品の二等品が出たときは大変です。有効活用したいけれど、桃のように傷みやすいものだと『どうしよう!』って(笑)。でも、そうした体験を繰り返うちに開発力がつきました。強い女性が多い職場なので、先輩のみなさんの姿を見ていると私も強くなれる」

ピスタチオといちご大福のジェラート。女性たちの雑談からユニークなフレーバーが生まれる。

道の駅のワンダーウーマンたちにインタビューを終えると、杉本さんからこんな提案が。
「この町って面白い人が多いでしょう?よかったら直売所のいちごの出荷や収穫体験を受け入れて下さっている、ユニークな農家さんをご紹介しますよ」
そうしてやってきたのは、アグリパーク竜王から徒歩5分の「高野いちご園」のビニルハウス。おしゃれないちごのフラッグが並ぶ。

SNS映えする「高野いちご園」のビニルハウス。かわいい。

ハウスに入ると暖かく、リゾートビーチのカフェを感じさせる、おしゃれな設えが。
「摘んで終わりじゃなく、お客さんが長居できるところにしたかったんです。ゆったりした雰囲気でくつろげるよう、いすや机はDIYで僕が作りました」
というのは、こちらを経営する株式会社NewBerry代表のマイキミツオさん。

ロゴのウォールもすべてマイキさんによるDIY。バーもある。

マイキさんが農園経営を始めるまでのキャリアはとてもユニーク。
「東京の大学で語学を専攻していました。そこから留学したり、いろんな国へ旅したり。卒業後はファッション関係の仕事をしていたんですが8年前にこの農園を地元農家さんから受け継ぐことになったんです。とにかく試行錯誤だらけでスタートしました」

竜王での農園経営で「生きている実感」を得られたというマイキさん。

マイキさんのあたらしい感性を、地域やアグリパーク竜王も応援。「面白いからどんどんやってみてください」という後押しを受けて、マイキさんは現在の観光農園のスタイルを確立した。現在ではビニルハウスでパーティーイベントを開くなど、地域内外の若者層とこの町を結ぶ存在に。
「今年2月、また竜王に新しい観光農園を開きます。これからは竜王という地域と一緒に飲食業に進出するなど、新しいチャレンジをしたいです」

8年間で高野いちご園は五棟から23棟にまで拡大。取材時はあきひめと紅ほっぺなどが育っていた。

冬の日差しでいちごはゆっくりと甘みを増していく。

人と地域と農産・畜産品が、道の駅を通じて才能や可能性を引き出し合い、互いに成長していく竜王町と道の駅。いま、そんな成功ノウハウを学ぼうと県内外の道の駅関係者がこの場所へやってくるという。その際は勉強会を開き、スタッフさんたちの経験を伝えているのだとか。

技術や知識を独り占めしない、「三方よし」の姿勢。
アグリパーク竜王のみなさんと農家さんの努力をみていると、江戸時代に近江商人から生まれた言葉を思い出す。いや、採れた農産品を決して無駄にせず、おいしく大切に活かしていくアグリパーク竜王は「売り手よし、相手よし、世間よし、自然よし」というもっと進んだ哲学をいまあたらしく生み出している。
取材を終えて、そんなことを考えた。

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