みちする

特集:
新米をよりおいしく
まほろばびとに聞く
但馬のソウルフード

2023.11.02

但馬地方のお米はなぜおいしい?

―「コウノトリ育む農法」で作っているから

兵庫県が推奨している「コウノトリ育む農法」。これは減農薬、有機栽培などの条件下で農作物を育てていこうという、農家の取り組みだ。日本では絶滅してしまった野生のコウノトリが再び住めるほど、環境にやさしい自然循環型農業の普及を目指している。
「コウノトリ育む農法」による米づくりでは、メダカや昆虫、カエル、鳥などが生息する豊かな生態系を維持するために、稲刈り以降も水田に水を張る「冬期湛水」を行う。さらに、春から初夏にかけて、あえて「早期湛水」をすることで、水路と農地をつなぎ淡水魚が行き交う環境を整えていく。これにより、水田には微生物が繁殖し、十分なミネラルを土にもたらしてくれる。そうなるともちろんオフシーズンも作業量が増えかなりの手間がかかるが、その分、艶やかで、甘いお米が収穫できる。

つまり、生き物が暮らしやすい農法は、人間のためにもなっている。
そんな自然と共生する米づくりを追求する朝来市の生産者たちの努力の結晶が、新米の季節に〈但馬のまほろば〉を彩る。

「まほろばびと」は本物のごちそうを知っている

「無限水」とも呼ばれるきれいな湧き水「二見水源地」に恵まれた但馬地方では 古代から農耕が発展してきた。また、「京都と日本海」と「播磨と但馬」への街道が交わる特殊な地域、朝来市ではさまざまな食文化が混ざり合っている。〈但馬のまほろば〉の「まほろば」とは、山並みに囲まれた、みのり豊かな美しいところという意味を表す。天空の城 竹田城跡に一番近い道の駅として、「ま」は美しさ、「ほ」は、非常に優れている物や所を示している。これは「古事記」にある日本武尊(やまとたけるのみこと)の歌にも登場する言葉。

そんな自然豊かな土地で暮らし、食文化を育んできた人たちを、ここでは「まほろばびと」と呼びたい。

まほろばびとが自信を持ってお薦めできるものは何か?
これこそ、但馬地方の歴史が育み、地元で愛されてきた「ごちそう」にちがいない。〈但馬のまほろば〉で手に入る「お米に合うソウルフード」から地域の家庭で親しまれる簡単レシピまで、まほろばびとたちが、「推し」を教えてくれた。

〈但馬のまほろば〉おすすめ①:瓶詰

岩津ねぎに但馬牛、朝倉山椒―
但馬の特産品を瓶詰めで手軽に楽しもう。

・岩津ねぎラー油

(内容量180g、540円)

「岩津ねぎ」たっぷり!「五つ星ひょうご」選定の“食べるラー油”
〈公益社団法人兵庫県物産協会〉が選定する“ひょうご五国(摂津・播磨・但馬・丹波・淡路)”の“地域らしさ”と“新しさ”を 兼ね備えた商品「五つ星ひょうご」のひとつ。朝来市特産の「岩津ねぎ」は、葉先までやわらかく丸ごと食べられるのが特徴。そんなねぎをラー油と組み合わせ、ザクザクとしたねぎの食感とごま油の香りがくせになるピリ辛風味の一品に。熱々ごはんにはもちろん、ラーメンや冷やっこにのせて、焼き肉やバーベキューのたれに混ぜてと、幅広くアレンジできるのも注目。

・岩津ねぎご飯だれ

(内容量200g、540円)

但馬みやげの定番。ごはんを呼ぶ「岩津ねぎ」の風味
「岩津ねぎ」は青ねぎと白ねぎの中間品種。そのため青ねぎらしい豊かな香りと、白ねぎらしい太さとやわらかさ、その両方の長所を併せ持つ、独特の甘さが格別だ。そんな「岩津ねぎ」に、もろみみそと豚肉そぼろを混ぜて、なめらかな食感に。ねぎの魅力を余すことなく引き出した、まさにごはんの“お友”だ。ごはんにのせて一口食べると、確かに白ねぎの甘みと鮮烈な青ねぎの香りが相まって、おかわり必至なおいしさ!焼き肉のたれにももってこい。

・山椒佃煮

(内容量80g、1,740円)

まろやかな辛みがやみつき。大名にも献上された但馬名物を佃煮に
但馬地方で山椒といえば、トゲのない雌木に実った「朝倉山椒」のこと。ミントのような爽やかな香りと穏やかな辛み。その大粒の実を、醤油とみりんでふっくらとやわらかく煮詰めた佃煮は、但馬地方の農家にとっては、農作業の合間に食べるおにぎりやお弁当でもお馴染み。そんな伝統的な味を再現し、甘さ控えめでフルーティーな「朝倉山椒」の魅力を堪能できる瓶詰めに。煮魚に添えたり、卵焼きの具にしたり、料理の名脇役としてもピリリと味を引き立てる。

・コクうま牛すじ飯の具

(内容量140g、800円)

新米を格上げ!「但馬牛」のすじ肉とバター醤油が食欲をそそる
食感、甘み、香り、ともに秀逸なご当地ブランド「但馬牛」。そのすじ肉もトロトロの食感で、ほんのりとした甘みを湛えている。これをたまねぎといっしょに炒め、そぼろ状に。ごはんに合うようにと、味付けは香ばしいバター醤油でじっくりと甘辛く、芳醇に炊きあげたのがこちら。少量、白飯にのせるだけでコクのあるうまみが食欲をそそり、箸が止まらなくなるほど。小皿に盛り付けて、日本酒の肴にしながらゆっくり味わうのもまた格別だ。

〈但馬のまほろば〉おすすめ②:ハヤシ&カレーライス

ごはんものの王道グルメといえばこちら!
但馬独自の素材やレシピが光る深い味わいを食卓で

・生野ハヤシライス 昭和30年代旨味

(内容量200g、515円)

歴史的な背景もおみやげに。生野町に広まった30年代社宅の味
兵庫県朝来市生野町は、かつて「佐渡の金、生野の銀」といわれた国内屈指の鉱山町。そんな町が生野鉱山でにぎわった昭和30年代。都会から赴任した鉱山職員社宅から広がった奥さんたち手作りのハヤシライス。その懐かしの洋食をアレンジ。たまねぎと、当時は珍しかったトマトジュースやケチャップをふんだんに使って、ちょっぴり甘酸っぱい味わいに。町の人が驚いたという“ハイカラ”なおいしさを地域ぐるみで復刻。

・生野ハヤシライス 昭和40年代深味

(内容量200g、550円)

さらに深く、コク旨に。町が育んだ昭和40年代のハヤシライス
昭和40年代になると、生野町ではハヤシライスが「ごちそう」として浸透。各家庭でオリジナルレシピが生み出され、ハヤシライスの味はより深く複雑に進化したという。「昭和40年代深味」では、当時生野銀山職員の社宅で人気が高かったというデミグラスソースをベースにしたハヤシライスを再現。ケチャップの酸味にデミグラスソースの甘さが加わり、甘酸っぱくもコクを感じられる味わいに仕上がった。

・但馬牛カレー

(内容量200g、700円)

但馬牛と幾種もの野菜のうまみがぎゅっと凝縮
こだわりはルーから。スパイスをバランスよく配合し、但馬牛肉と、たまねぎ、トマト、にんじん、セロリといった野菜をじっくり煮込んだ濃厚なカレー。一口含んだ瞬間、これまでのレトルト食品の概念が変わるような但馬牛肉のうまみと奥行きのある風味に出合うはず。また、付け合わせには朝来市の農家が漬けたらっきょうをぜひ。但馬地域と鳥取県は意外に近く、流通に便利なことから、鳥取県産の大ぶりならっきょうが手に入るそう。

〈但馬のまほろば〉おすすめ③:ふりかけ・漬物

おみやげにも!ご自宅用にも!
新米の季節、但馬自慢の味を添えて

・岩津ねぎ入りふりかけ

(内容量100g、540円)

熱々ごはんや料理にひとふり。くせになるサクサク食感を
特産の「岩津ねぎ」を乾燥させて、その甘みをギュッと閉じ込めたふりかけ。「岩津ねぎ」は日本三大ねぎの一つで、甘みとやわらかさが特徴。そこに、さばの削り節といりごまが入って香ばしく、食感はサクサク。ごはんとの相性も抜群だ。お弁当やおにぎりに重宝するほか、パスタやサラダにパパッとふりかけてもおいしく、彩りもきれいに。

・但馬牛ふりかけ

(内容量90g、650円)

幅広い層に人気!上質な但馬牛のうまみをふりかけで存分に
まろやかなうまみが「白ごはんと相思相愛の組み合わせ」と称される但馬牛。その風味を生かしたふりかけが〈但馬のまほろば〉で人気を博している。育ちざかりの子供にとってはもちろんのこと、食の細い大人の方にも「食べやすい」、「やさしい味」だと親しまれているのだとか。和テイストのパッケージも高級感があり、おみやげにも喜ばれる一品だ。

・醤油蔵のごまふりかけ(岩津ねぎ入)

(内容量80g、540円)

大正時代から変わらない伝統醸造の醤油が香る
醤油で味付け焙煎したごまに、乾燥させた「岩津ねぎ」を加えた香ばしいふりかけ。手がけたのは、大正時代創業の天然醸造と手づくりにこだわり続ける朝来市の醤油蔵〈こむらさき醸造有限会社〉。どんな料理にもよく合うようにと、純度の高い地下水でくせがなくまろやかに醸した醤油の味が、ごまと「岩津ねぎ」、2つの異なる風味を見事にマッチングさせている。お浸しや麺類にもぴったりだが、新米の季節、まずは白いごはんでぜひ。

・はちぶせ漬け

(醤油味/朝倉山椒入り 300円/350円)

ほどよく辛みが効いた養父市の家庭で愛され続ける漬物
養父市で代々つくられてきた漬物「はちぶせ漬」。きゅうり、みょうが、しその実、とうがらし、干しだいこんなど多彩な食材を使った、ほどよく辛い味付けが特徴だ。〈但馬のまほろば〉で販売しているのは、養父市の加工グループ〈すずめの学校〉の手づくり。養父市特産の朝倉山椒を入れたピリッとした風味と、さっぱりとした醤油風味の2種類が楽しめる。その名も、養父市と香美町にまたがる「鉢伏山(はちぶせやま)」からだという、まさに郷愁誘うふるさとの味。

簡単レシピ:但馬農家さんの黒豆ごはん

地元の特産物のおいしい食べ方は、やっぱり産地の生産者に聞くのが一番。というわけで、但馬地方の農家さんのもとへ。
「うちでは毎日、黒豆ごはんを炊いていますよ」。
そう教えてくれたのは、朝来市で「コウノトリ育む農法」を担い、コシヒカリを育てている村上彰さんとその奥様の健子さんご夫妻。
材料は、無農薬栽培のコシヒカリと、兵庫県産の黒豆「丹波黒」。いずれも〈村上ファーム〉で収穫されたものだ。以下にとっても簡単な「黒豆ごはん」の作り方をご紹介。

  • 黒豆を水でもどす

ボウルの水に黒豆を一晩ほど漬けておく。翌朝には、水を吸ってふっくらとやわらかく。

  • 黒豆を炊飯器に移す

炊飯器に、洗った米と、黒豆をもどし水ごと入れる。水は米に合わせた量よりもやや多めになるよう調整。

  • 炊飯する

お好みで塩、酒、酢をごく少量加え、通常通りに米を炊く。

  • 完成

炊き上がりは酢を少々入れたことでほんのり桜色に。

黒豆ごはんは甘いお米に、ほくほくの黒豆の相性が抜群。さらに、黒豆は鉄分や食物繊維も豊富だから体にもうれしい。お米と黒豆さえあれば簡単にできるメニューだが、だからこそ食材が重要。米どころで黒豆の産地でもある但馬の上質な食材で試してほしい。

〈村上ファーム〉で栽培されているのは、朝来市初の有機JAS認定米。道の駅でも固定のファンがつくほどの人気だ。

こんなにおいしい黒豆ごはんを毎日食べられるとは、但馬の農家さんがうらやましい。そう伝えると、村上さんは「僕らには普通のごはんやで」と笑った。

産地の家庭にとっての普通のごはんこそ、実際に現地を訪れないと味わえないソウルフード。〈但馬のまほろば〉はまさに、地元の人にとっては身近な自然との共生の中で育まれた貴重な食文化に出合える場所だ。本来の意味での「ごちそう」がここにある。

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