みちする

ひと:
ここで出合えた天職
目指すは120点!

2023.07.20

ホテル、入浴施設、レストラン…。
〈道の駅 神戸フルーツ・フラワーパーク大沢〉には、
いろいろなジャンルの関連施設が集まっている。
そこで働く人たちの、道の駅への思いも十人十色。
それでも共通しているのは、この場所への強い愛着だった。

  • 神戸ホテル フルーツ・フラワー〉 舩城麻美さん

「もう10年通っていますが、いつも笑顔で素敵な方。彼女に会えるのはこのホテルに来る楽しみなんですよ」。
常連客の女性のコメントに、舩城麻美(ふなきあさみ)さんはしきりに謙遜している様子。舩城さんは〈神戸ホテル フルーツ・フラワー〉を運営する〈株式会社シーエイチアイ〉の社員。ホテル内での接客やイベントの企画が主な仕事だ。

「ホテルや観光事業というより、“ここ”で働きたかった」と思い入れたっぷりに語る舩城さん。

「働き始めて約10年になります。私はこのホテルが心から好きなので、毎日がすごく幸せです」と舩城さん。この場所に特別な思いでも?
「私、このホテルで結婚式を挙げたんです」。
なるほど。以来、舩城さんはプライベートでも〈神戸ホテル フルーツ・フラワー〉を訪れるようになったという。美しい景観やスタッフの丁寧な接客に触れるうち、舩城さんに「ここで働きたい」という願いがめばえた。
「だから、受付のアルバイト募集を知って急いで応募しました。そのときに、結婚式を担当してくれた方が支配人だって初めて知りました(笑)。そんなご縁もあり最初はアルバイトで、やがて正社員に登用してもらえました」。

ホテル敷地内にあるブライズハウス(上)と教会(下)で舩城さんは結婚式を挙げた。

キャリアを重ね、舩城さんに任される仕事の種類も増えていった。今の彼女はインターネットでの情報発信に力を注いでいるのだという。
「うちのホテルでイベントを企画する場合、ネットでの宣伝は欠かせません。どうやって魅力的に情報を伝えて集客につなげるか。試行錯誤しながら展開を考えています。でも、ネットに関する仕事って数字ばかり追うことになりがち。気をつけているのは、『お客様のためになっているかどうか』です。自分がここで見つけた楽しいことをお客様にも知っていただきたい。このことは10年間、ずっと忘れないようにしてきました」。

舩城さんは「私の提案に上司が耳を傾けてくれる、自由な職場でよかったです」とやりがいを感じている。

今後は「関西圏の外にももっとアピールしていきたい」という舩城さん。常に笑顔を絶やさない彼女の話からは、好きなことを仕事にできる充実感がみなぎっていた。

  • デイズキッチン〉 大野辰嘉さん

レストラン〈デイズキッチン〉の料理長、大野辰嘉(おおのたつよし)さんは2017年の開店時から厨房を切りもりしてきた。多くのフードメニューを考案し、食材の仕入れも行っている。もともとは県内のほかの飲食店で料理人をしてきたという大野さんは、どのような理由で〈デイズキッチン〉に転職したのだろうか?
「当時の料理長が知り合いで、僕を誘ってくれたからです。また、僕は新潟出身で、実家が農業を営んでいたんですよ。野菜作りを身近に感じていたので『地産地消であそぶ』という〈デイズキッチン〉のコンセプトに強く共感できました」と、大野さんは入店までの経緯を振り返ってくれた。

「生まれて一度もお米を買ったことがない」という大野さん。社会人になってから恵まれた環境で育ってきたと理解できるように。

「この職場に来て、『落ち着くべきところに落ち着いた』という気持ちです。僕は新潟にいた頃、『農業は継ぎたくない』と思っていました。でも、今は食に関わる仕事の中でも、生産者さんとの距離が近い場所で働いている。バックボーンとか偉そうなことは言えませんが、幼い頃から農作物に触れてきた記憶がなければ〈デイズキッチン〉に惹かれなかったかもしれません」。

ピザ窯に向ける真剣な眼差し。一瞬の判断がピザの焼き加減を左右する。

道の駅の中にある〈デイズキッチン〉と、他の飲食店ではどのような違いがあるのだろうか。
「料理人は最高の品を提供するのがあたりまえなので、どこのお店で働いていても仕事自体に大きな差はありません。でもここでは、食材の産地や生産者さんの顔をよく知っているわけなので、気合いが入りますね。気持ちがノってくる分、〈デイズキッチン〉では100点の料理を120点にできていると自負しています」。

「120点の料理」を提供しながら、大野さんにはこれから挑戦したいことがあるという。
「店内にサラダバーを用意している以上、野菜の確保は重要な問題です。どうしても地元神戸の野菜だけではまかなえなくて、市外から調達するケースも出てきてしまう。契約農家さんの数を増やすなどして、なんとか地元産の供給を安定させたいですね」。

種類豊富なサラダバーは〈デイズキッチン〉の魅力。この品揃えを守るために大野さんたちは奮闘している。

自身が野菜を育てる側だったからこそ、大野さんは生産者の苦労を理解し、おいしい料理にして恩返ししていく。農家と飲食店の良好な関係は、何よりもお客さんのためになっている。舩城さんや大野さんのように、天職に就いているといえる人のひたむきさこそ〈神戸FFP〉を支える屋台骨なのだと思った。

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