みちする

どんな駅?:
遺跡に囲まれた
古代と今の結び目

2023.09.04

奈良県明日香村は6~7世紀にかけて、時の天皇の宮〈飛鳥京〉が置かれていた場所。飛鳥時代と呼ばれた当時の名残は今も村のあちこちに残っている。蘇我馬子の墓と伝えられる石舞台古墳、石室の壁画で有名な高松塚古墳、日本最古の仏教寺である飛鳥寺などは、日本史の教科書にも登場する遺跡や建造物。これらの観光名所に囲まれるようにして、〈道の駅 飛鳥〉は村のほぼ中央に広がっている。
〈飛鳥〉の開駅は平成30年。近鉄線・飛鳥駅前の施設や飲食店を複合する形で、国土交通省に道の駅として登録された。駅内では農産物直売所と観光案内所のほか、飲食店やレンタサイクル、村の美しさを称えるモニュメントなどが来る人を迎える。歴史観光の前に道の駅で、まず朝採れの野菜や果物を吟味するか?それとも、旅の帰りにおみやげ選びや食事で立ち寄るか?さまざまな楽しみ方をできるのが〈飛鳥〉の醍醐味だ。

① あすか夢販売所

農業が盛んな明日香村は、大根、しょうが、いちご、みかんといった数々の特産品を生み出してきた。村を挙げての就農者支援にも積極的。昔ながらの農法と若いアイデアが入り混じり、ユニークな新商品も開発されている。スリランカ出身の就農者が村に応援されながら考案した「ウダーラさんちのツルムラサキとレンズ豆のスリランカカレー」はその代表例だ。
〈あすか夢販売所〉(通称:夢販)が愛され続ける理由は、これらの上質な青果、調味料、加工食品が集まってくるところ。旬の果物や梅はかぐわしく並び、太陽をたっぷり浴びたトマトは棚の上で真っ赤に輝いている。〈夢販〉の評判はエリアの外にも届き、県外からここ目当てに訪れるお客様も多い。

平成23年度の直売所甲子園では優秀賞を受賞。道の駅の一部になってからも、変わらない品揃えの良さ。
出口脇には、特産いちご「あすかルビー」を使ったパフェやアイスを頼めるスイーツコーナーがある。

② 飛鳥びとの館

明日香村の別名は〈明日香まるごと博物館〉。村全体がフィールドミュージアムとして、飛鳥時代から変わらない山並みや田園風景、歴史的建造物を伝えているからだ。飛鳥駅を降りたら、そこはもう博物館の一部。どこに行くか、何を見るかを〈飛鳥びとの館〉で相談しよう。ここは道の駅の総合案内所で、明日香村の観光ガイドをしてくれている。周遊バスやおみやげどころ、飲食店などの情報を館内窓口で気軽に教えてもらえるので便利。さらに、村のボランティアガイドを紹介してもらうこともできる。地元の人だからこそ知っている、穴場スポットやグルメを聞けるのがうれしい。

飛鳥時代の古墳をモチーフにした文房具、菓子などのおみやげも。
明日香村にある〈キトラ古墳〉の壁画にちなみ、おみやげ売り場の上には朱雀の姿が描かれている。
駅前ロータリーにある石碑〈飛鳥蓬莱山モニュメント〉。伝説上の神山・蓬莱山の形に村の自然の美しさを重ねている。
道の駅内には観光客向けに3軒のレンタサイクルが。平日の基本料金はいずれも900円/日。

③ 飲食店

ランチに居酒屋、お弁当からスイーツまで、〈飛鳥〉の飲食店の多様さは複合型の道の駅ならではの魅力だ。明日香村の農産物を堪能したいなら、〈食彩酒音 パレット〉がおすすめ。2022年11月にオープンし、古代米や大和肉鶏といった奈良県の地場産品にこだわったメニューを考案。唐揚げやチャーハンなどの親しみやすい料理にして、地元の味をアピールしている。

〈パレット〉店内。1階(上)はランチ中心、ソファでくつろげる2階(下)は夜の居酒屋中心で営業。

屋台風の店舗でお手軽グルメを味わいたいときは〈京都 古都果 飛鳥店〉へ。季節の果物で作られるフルーツサンドは、味もビジュアルも大人気。明日香村で歴史探索するときには、ぜひ甘いものでエネルギー補給を。


京都発祥の〈古都果〉。奈良県内にあるショップはここだけ。
注目メニューは、あんこといちごをパンで挟んだ「いちご大福サンド」。

駅長の言葉

古墳の壁画にちなみ、朱雀の被り物で道の駅と明日香村をPRしてくれた吉本駅長。

吉本幸史駅長は、〈飛鳥〉の良さを「サステナブル(持続可能な)」という言葉で表してくれた。
「明日香村では昭和55年に通称『明日香法』(※)が公布・施行され、歴史的な景観や文化財が保護されています。また、〈夢販〉にある朝採れ野菜も、明日香村の豊かな自然を大切にしている点でサステナブルだと思います。奈良県は海外からの観光客が多いので、道の駅では全世界に向けてサステナブルな観光事業をアピールしていきたいですね」。

(※)正式名称は「明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法」。

駅長の話を聞いて、明日香村で自然が保護されてきたことと、農家さんたちが元気であることには関連があることがわかった。この村では、古き良き生活様式が根づいているが、それが質の高い農地が安易な開発から守られ続けている理由のひとつだ。そして、そこで収穫された農産物の受け皿になっているのが〈飛鳥〉。道の駅を結び目にして、飛鳥時代から受け継がれてきた人々の営みが、現代の農業の勢いへと繋がっているのだ。

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