湧き水で育てた大和高原のお米 無料食べ比べ会 in〈道の駅 針テラス〉レポート!
2023.12.07 FOOD
秋晴れの日曜日になった10月22日。奈良市針町にある〈道の駅 針T.R.S(以下、針テラス)〉内の農産物販売所〈つげの畑 高原屋〉にて、「湧き水で育てた大和高原のお米 無料食べ比べ会」が開催された。これは奈良市都祁(つげ)地区のお米農家さんが、各々の炊き方で新米を持ち寄り、一般のお客さんに食べ比べてもらうイベントだ。お客さんはもっともおいしいと思ったお米に投票。その一票一票は、農家さんにとって何よりの励みになる。通算第5回となった今年の「無料食べ比べ会」には過去最多の来場者が訪れ、大きな盛りあがりを見せた。
「新米の試食会をやっていますよ~。ぜひ寄っていってくださ~い」。
午前10時を少し過ぎた頃、〈針テラス〉の〈つげの畑 高原屋〉の玄関前で、農家さんが元気に呼び込みを始めた。店内に入るとすぐ、特設ブースにずらりと並んだ電子炊飯器が目に飛び込んできた。今回の「無料食べ比べ会」では11軒の農家さんが13台の炊飯器と1個の鍋でごはんを用意。「コシヒカリ」「ミルキークイーン」「つきあかり」など、その品種はさまざま。炊き加減にも各家の好みが反映されている。中には『お弁当でおいしい』と、あえて冷やごはんを持ってきた農家さんもいた。午後2時まで約4時間にわたり、農家さんたちは一般のお客さんに都祁地区のお米をPR。
「無料食べ比べ会」の主催は「大和高原・米・食味向上委員会」。「もっと都祁地区のお米のおいしさを知ってもらいたい」「都祁地区を日本一のお米どころにしたい」と願う地元の農家さんたちによって結成された団体だ。ミネラル豊富な土壌に恵まれた大和高原に属する都祁地区は、奈良県を代表するお米どころ。そして、全国区の新米コンクールでも東北や北陸などの名産地に並び、入賞者を輩出し始めている。
そんな農家さんたちのお米に対するこだわりを直接教えてもらえるのが、「無料食べ比べ会」の醍醐味だ。どの品種をどのように炊けばいいのか、毎日おいしいお米を食べている農家さんにはそれぞれの流儀がある。炊きたてのごはんを味わっているうちに、農家さんの食卓でごちそうになっているような感覚になる。
今回出品されたお米の中では「ゆうだい21」が注目を集めていた。1990年、宇都宮大学の農場で偶然誕生し、2010年に品種登録されたお米だ。それ以来、全国の品評会で高評価を獲得してきた「ゆうだい21」は、粒の大きさや独特の弾力が特徴。関東を中心に栽培されてきたが、都祁地区でも試験的に育てる農家さんが増えている。その味はお客さんにも好評で、これから都祁地区の新しい名産品になる可能性を感じさせた。
〈高原屋〉内で人気の卵かけごはん専門店〈IBURI KOBO 針テラス店〉も、この日は特別に新米メニューでお客さんを出迎えた。店長・明後辰二郎(みょうごしんじろう)さんの祖母にあたる久美子さんが握った新米ごはんのおにぎりは、ごまに越前塩というシンプルさが、お米の甘みを際立たせていた。おにぎりの具は、久美子さん特製の燻製梅干し。吉野で採れた梅を山桜のスモークチップで燻すことで、ますます香りがよくなるのだそう。
〈高原屋〉を運営する〈株式会社まほろばホールディングス〉代表の山本浩文さん、〈高原屋〉店長の大除光男さんもイベントの盛況に笑顔。
〈株式会社まほろばホールディングス〉山本浩文代表のコメント
「大和高原の農家さんの熱意を感じられる機会だと思います。私も新米をいただきましたが、本当においしかったです。お米の質、炊き方のこだわりに生産者の誇りがみなぎっています。これからもいいものを作ってくださっている農家さんを応援していきたいです」。
〈つげの畑 高原屋〉大除光男店長のコメント
「たくさんのお客様が来てくれてうれしいです。例年に比べてもにぎわっていて、良いイベントになりました。これからもお客様に楽しんでいただけるような企画をどんどん実現させていくつもりです」。
14時きっかりにイベントは終了。控室で開票が始まった。有効票は過去最多の169票。14種類すべてのごはんが票を獲得する中、最多票を集めたのは中山廣一(こういち)さん。全国レベルの新米コンクールでも数々の受賞経験を持つブランド農家さんだ。「コシヒカリ」と「ミルキークイーン」を9:1の割合で混ぜた炊き方がお客さんから支持されたようだ。
中山廣一さんのコメント
「9:1は試行錯誤の末に辿り着いた“黄金比”です。『コシヒカリ』の甘みに、ほどよいバランスで『ミルキークイーン』の粘り気が合わさるんですよ。〈高原屋〉さんにもこの比率で混ぜたお米を出荷しているのでぜひ味わってほしいですね」。
集計結果を受けて、「最多票をいただいて、大変光栄です。けれど、本当にすべて票数は僅差でしたから、どのお米も美味しいと大勢のお客様に評価いただいたことが、もっとうれしいですね。」と中山さん。「都祁地区の農家はみんな真剣に米づくりをしているんだと、多くのお客様に知ってもらえたと思います。それが今日一番の収穫でした」。
イベント終了後も熱心に意見交換をしていた都祁地区の農家さんたち。その姿から、皆さんが活発に交流し、切磋琢磨しながら、地区全体のお米の質を向上させるために努力していることがうかがえた。お米農家の強い絆と、彼らを応援する道の駅がある限り、都祁地区の名は全国にますます広まっていくはず。そう思えた一日だった。