みちする

お買い物・グルメ:
夢販の有機農産物と
古代×現代のランチ

2023.09.04

地元農家の人たちの手による青果物や佃煮、ジュースなどを買える〈飛鳥〉のお店が〈あすか夢販売所〉。〈夢販(ゆめはん)〉の略称で近隣の人たちから親しまれているこの場所は、観光客の間でも評判。その充実した商品棚を眺めてみると、多くの人に愛される理由が分かる。

〈夢販〉のおすすめ①野菜・果物

奈良県内で約300平方キロメートル広がっている〈奈良盆地〉。その最南端である明日香村は平地に恵まれ、農業向きの環境が整っている。奈良時代には田畑で働く人々の集落が形成され、現在の明日香村の礎が築かれた。同時に、村の里山では棚田による稲作も発展。平成23年に文化庁選定の「重要文化的景観」に指定された〈稲渕の棚田〉は自然を利用した明日香村の農業を象徴するスポットだ。
〈夢販〉に集まった朝採れの野菜・果物はこれらの歴史を背景にした、明日香村が育んだ宝物たち。白菜やレタスなどの葉菜、大根やにんじんなどの根菜、旬のフルーツや米などがたっぷりと棚に並んでいる。その多くが無農薬、有機栽培でつくられているというから驚きだ。

明日香村は年間の日照時間が長いので、「甘夏」「はっさく」などいろいろなみかんが大きく甘く育つ。
明日香村では赤熟もぎりの「王様トマト」の栽培もさかん。リコピンや遊離グルタミン酸などのうまみ成分が豊富。
〈夢販〉スタッフの中井さんは「どの季節にもおいしい野菜が揃っています」とPRしてくれた。

〈夢販〉のおすすめ②みかん・いちご関連品

さまざまな種類のみかん、いちごは〈あすか夢販売所〉をにぎわす明日香村の特産品だ。その中でも、「アスカウェイブ」と「女峰(にょほう)」を交配させて2000年に生まれた「あすかルビー」は奈良県のブランドいちごとして人気。鮮やかな朱色と香りの強さが特徴で、春先の〈夢販〉には「あすかルビー」目当てのお客さんたちがたくさん訪れる。
みかんやいちごはそのまま食べても絶品だが、〈夢販〉の関連食品でバリエーションも楽しみたい。新鮮な果物を使ったドレッシングやジャムなどはいずれも地元の生産者の手づくり。つくった人の顔が見える、真心のこもったおみやげだ。

明日香村産の「あすかルビー」やみかん、玉ねぎ、ねぎなどからつくったドレッシング「salad style」シリーズ。
村の女性たちが立ち上げた〈ゆめ明日香〉の手作りジャムは、ナチュラルな果物の味を大切にしている。
〈明日香ベビーリーフ菜園〉でしぼられた甘ずっぱさがクセになるジュース「明日香はっさく」。

〈夢販〉のおすすめ③明日香村のしょうがの佃煮

明日香村の農作物を使った、オリジナル食品を次々に開発している工房〈ゆめ明日香〉。2006年の創業直後から現在にいたるまで〈夢販〉で親しまれているのが〈ゆめ明日香〉特製の「明日香村のしょうがの佃煮」だ。明日香村はしょうがの名産地で、しょうがの貯蔵用に穴を掘っていたら〈高松塚古墳〉が発見されたという逸話も残っているほど。村とは切っても切れない関係のしょうがを通して「地元の良さを伝えたい」という思いから、この佃煮は生まれた。
しょうがのピリリとした風味が甘口のしょうゆと絡み合い、食欲をそそる風味。甘辛の絶妙なバランスは、丁寧な手づくりにこだわる〈ゆめ明日香〉だからこその技だ。

〈夢販〉のおすすめ④〈徳星〉のしょうゆ

〈ゆめ明日香〉の佃煮にも用いられている「こいくち醤油」(左)と、かけしょうゆにぴったりな「うすくち醤油」(右)。

1918年の創業以来、明日香村でしょうゆ作りを続ける名店が〈徳星醤油醸造場〉だ。〈徳星〉では100年前から受け継いできた杉桶で、香り高いしょうゆを守ってきた。桶の中で麹を熟成させる期間は2年以上になることもあり、商品の一本一本に職人の矜持が込められている。そのまろやかな風味は煮物や椀物などに合い、食材本来の味を引き出してくれる。

この土地の伝統を大切にしようとする精神は、道の駅の飲食店にも宿っている。ここからは、〈あすか〉のグルメを紹介。

グルメ〈食彩酒音 パレット〉の定食

近鉄線〈飛鳥駅〉のロータリー沿いに建つ飲食店〈食彩酒音 パレット〉は道の駅の一部。夜には地元の人たちが英気を養うための居酒屋として営業しているが、昼間は無農薬野菜や添加物を含まない調味料でつくったランチを提供している。
看板メニューは「飛鳥つくねハンバーグ定食」。ハンバーグに使われているのは奈良県で育てられている「大和肉鶏」の肉だ。「大和肉鶏」は低脂肪である一方で、肉汁も多いのが魅力。弾力性もあるので、ハンバーグにしても形が崩れず美しい姿になる。適度な噛み応えがある「大和肉鶏」を古代米や季節の温野菜と一緒に味わいたい。

飛鳥つくねハンバーグ定食 1,980円。

実は、古代米は〈パレット〉の定食に必ず使われている。古代米は鉄分やカルシウム、ビタミンB1・B2・Eなどの栄養価が高いヘルシーフード。米が野生種だった時代からほとんど品種改良されていないので生命力が強く、栽培環境をあまり選ばない。明日香村では飛鳥時代や奈良時代にも栽培されていたとして歴史に登場し、現代でも多くの農家が古代米を育てている。
古代米を主役にした〈パレット〉のランチが「古代米焼き飯定食」。「気軽に古代米を味わってもらいたい」という思いから生まれたチャーハンだ。白米よりも粘り気が少ないため、古代米に火を通すとパラパラになり、チャーハンにはもってこい。具材の卵やにんじんも古代米の甘さに合っている。

古代米焼き販定食 1,450円。 

お店のコメント

自ら厨房に立ち、〈パレット〉を切り盛りしている竜馬さん。

〈パレット〉店長でミュージシャンでもある川端竜馬さんは、音楽仲間たちと〈飛鳥白帯農園〉も運営している。〈パレット〉のメニューには、〈飛鳥白帯農園〉で収穫した無農薬野菜やお米がたくさん使われている。
「飛鳥時代の人々は集落で助け合いながら農業や音楽などの文化を発展させてきたといいます。僕たちも音楽活動をしながら飲食に関わっているので、先人の暮らしに倣いたいと思い明日香村でお店を始めました」。

〈パレット〉では毎月第2、第3金曜日には「華金(はなきん)」、最終日曜日には「祭日」というイベントを開催。飛鳥時代をテーマにした音楽と料理で、お客様をもてなしている。
詳細はお店のSNSでチェック!

竜馬さんたちは「初心(白帯)を忘れず先人から謙虚に学びながら、農業や飲食に携わりたい」との願いを〈飛鳥白帯農園〉の名前に託したのだそう。飛鳥・奈良時代から育てられてきた野菜や穀物を後世に残そうという熱意が若い世代にも強く宿っていることに、胸が熱くなる。農産物そのものの良さと、そこに関わる人たちの情熱が〈飛鳥〉の直売所や飲食店にはあふれている。特産品は地域の人たちの努力と思い入れによって生み出され、守られていくのだと〈飛鳥〉のおみやげやグルメに教えられた。

道の駅には「あすかルビー」のスイーツも!

あすかルビーミックス(あすかルビー+北海道ミルク) 400円。
フローズンいちごソフト 500円。
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