みちする

ひと:
道の駅の花を
もっと好きになる
ドライフラワー談義

2023.09.02

〈マーガレットステーション〉を彩るドライフラワーの多くは、
地元のサークル〈愛 LOVE ドライフラワー club〉によるもの。
見る人の心を和ませてくれる花々の作者たちは、
どんな気持ちで花と向き合っているのだろう。
その答えを知るためにサークル会員さんたちの輪に入れてもらい、
ドライフラワー談議に花を咲かせた。

「道の駅で教室を開催したり、オブジェをつくったり」。


―みなさんが所属されている〈愛 LOVE ドライフラワー club〉とはどんな集まりなんでしょう?

森下静子さん(以下、森下さん)「愛東地区でドライフラワーを手づりするクラブです。道の駅の近くに住む、農家の女性たちで構成されています。平成9年から活動しているから、25年以上にもなりますね。ふだんは各々が自宅でドライフラワーをつくっていて、できたら道の駅に出荷するんです。でも年に3回、5、8、11月にドライフラワー教室を〈マーガレットステーション〉で開催するので、そのときはメンバーが集まります。また、道の駅の玄関をディスプレイしたり、干支のオブジェをドライフラワーでつくったりするのもみんなで力を合わせます」。

―ご自分たちで育てた花を作品にしているんですか?

森下さん「基本的にはそうですよ。種や苗の仕入れに行くのも楽しいんです。バスを借りて大阪までメンバーでたまにお出かけします。花をたくさん乗せて帰ってくるから、『花が乗客でうちらが荷物やん』って思います(笑)」。

クラブの会長としてメンバーを引っ張っている森下さん。
道の駅に飾られていた集合写真。2023年5月時点でクラブのメンバー数は10名。

「育てている花がたくさんありすぎて(笑)」。


―お三方はどのような花でドライフラワーをつくっていらっしゃるんですか?

奥村綾子さん(以下、綾子さん)「私はスターチス、紅牡丹、バラ、アンモニウム、ラグラスなどです。自分が心から好きな花を育てて、ドライフラワーにしています」。
森下さん「私は紫陽花(あじさい)、ラグラス、ローズマリー。百日紅(さるすべり)の実でもつくります」。

―百日紅って大きな木ですよね。あの実もドライフラワーになるんですか!

森下さん「面白いでしょ。それと、芙蓉(ふよう)や家にある桐の実もね」。

―ユニークなラインナップです。

森下さん「ちょっと変わった、人と違うドライフラワーにしたいんです」。
奥村とみ子さん(以下、とみ子さん)「森下さん、畑でつくるきゅうりもユニークなんですよ。四角とか星形とか」。
森下さん「またお野菜でも取材に来てください(笑)。それから『万葉集』に詠われている植物の、蓼(たで)も育てています()」。

―とみ子さんはいかがですか?

とみ子さん「梅擬(うめもどき)、紅花(べにばな)、綿、ミモザアカシア、それとユーカリ、鶏頭(けいとう)も。私はスモークツリーをつくっているので、それに使える花を育てています」。
綾子さん「あの白い実は何やっけ?」
とみ子さん「あ、南京櫨(なんきんはぜ)な。たくさんありすぎて忘れてしまうわ」。
綾子さん「茨(いばら)もあったよね?クリスマスに使うやつ」。
とみ子さん「山帰来(さんきらい)な」。
森下さん「クリスマス用のドライフラワーには欠かせないよね」。

―育てていらっしゃる花が見事に三者三様ですね。

「万葉集」で蓼が登場する歌は以下の3首。
「我が宿(やど)の穂蓼(ほたで)、古幹(ふるから)、摘み生(おほ)し、実になるまでに、君をし待たむ」(作者不明)
「みてぐらを、奈良より出でて、水蓼(みずたで)、穂積(ほづみ)に至り、鳥網(となみ)張る、坂手(さかて)を過ぎ、石(いわ)走る、神なび山に、朝宮(あさみや)に、仕(つか)へ奉(まつ)りて、吉野へと、入ります見れば、古(いにしへ)思ほゆ」(作者不明)
「童(わらは)ども、草はな刈りそ、八穂蓼(やほだて)を、穂積(ほずみ)の朝臣(あそん)が、腋草を刈れ」(平群朝臣(へぐりのあそん))

ドライフラワーづくりのベテランとして、会員から慕われている綾子さん。
とみ子さんは「人に喜んでもらえるものをつくのが私の喜び」と語ってくれた。
道の駅に置かれた作品に貼られたラベル。これを見てクラブのファンが増えていく。

「道の駅は地元やしお客様とお話もできる」。


―みなさんは農業もされてるんですよね?

森下さん「仕事を定年退職してからはみんな、農業に専念してますよ」。

―やっぱりお花を植えられる広い場所があるから、ドライフラワーづくりも盛んなのかなと。

森下さん「それもあるけど、みんなお花が好きやからね。本当は生花も出品したかったんですよ。でも、道の駅やったら直売の野菜や果物に紛れるかなって。それでドライフラワーにしようと思ったんです」。
とみ子さん「家では好きにいろんな花を育てて、余ったらドライフラワーにしている感じやね」。

―道の駅のショップも拝見して、すごく素敵な作品が並んでいるとだと思いました。道の駅以外でドライフラワーの販売はしないんですか?

森下さん「今はしてないですね。昔は大きなホテルの前で売ってたこともあったけど。うちらも畑が忙しいからね。最近はあんまりです」。
とみ子さん「出品だけして、販売を任せられるんやったらいいんやけどね。自分たちで売りに行く時間はなかなかないんですよ」。
森下さん「道の駅は地元やし、顔を出せるじゃないですか。ショップに来てくれるお客様とお話もできるから。感想も伝えてくれるし。『きれいやね』『どうやってるの』って聞かれたら、つくり方も全部話しますよ(笑)」。

朗らかで息ぴったりのトークを聞かせてくれたお三方。

「ずっと楽しい」。「生まれ育った場所みたいな気に」。


―みなさんのこれからの抱負もぜひ聞かせてください。

とみ子「今のままで楽しいけど、どんどん種類は増やしたいですね」。
森下さん「お客様がリクエストしてくれるなら応えたいです。あと、ドライフラワー教室の回数も増やしたい。若い子が興味を持ってくれるようにね」。
綾子さん「私は娘に引き継いでもらえたらうれしい。今育てている花がこれからも残るように」。

―まだまだ綾子さんもお元気じゃないですか!

森下さん「そうそう。いくつになっても前向きな気持ちで活動していきたいね」。

―最後に〈道の駅 東近江あいとうマーガレットステーション〉への思いを聞かせてください。

森下さん「ほんまにいい道の駅ができたと思ってます。昔、役場で働いていた頃は『こんなん成功するか』ってみんな言ってたのに(笑)。でも、ちゃんと人が来てるよね」。
綾子さん「できてからずっと楽しいわ。こうしてみんなで集まれるもの」。
とみ子さん「そうやね」。
森下さん「まるで生まれ育った場所みたいな気になってます」。
綾子さん「都会に娘がいるんですけど、ここの果物を送ったら『都会のは食べられないよ』って」。
森下さん「お客様とお話していても、みなさん『ここの野菜はおいしい』って言ってくれます。このままどんどん大きな道の駅になってほしいです」。

園芸文化を盛り上げる道の駅にお三方は「地元民を大切にしてくれている」と声を揃えた。

「私たちみんな、ここが大好き」。
そう締めくくってくれたメンバーのみなさん。
彼女たちがつくるドライフラワーには、道の駅を訪れる人への感謝がまっすぐ込められていた。その思いが作品を通して伝わるからこそ、心が明るくなり、癒されるのだろう。

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