かつらぎ町で高校生が起業!地元農家を応援する〈ゆらりファーム〉
2024.04.13 PERSON
和歌山県かつらぎ町は柿やみかん、桃などの果樹栽培が非常にさかんで「フルーツ王国」とも呼ばれている。町内にある〈道の駅 くしがきの里〉には、上質な地元産フルーツが集まっている。そんな道の駅で、かつらぎ町の柿を使ったジャムやそうめんを見つけた。
柿そうめん
小麦粉とかつらぎ町産の柿パウダーをミックスしたそうめん。ほのかな柿の甘さが、にゅうめんにしたときに出汁の旨味を引き立てる。
柿ジャム
糖度が高いかつらぎ町の柿のおいしさを引き出したジャム。果肉の食感も楽しめる。
これらの食品を開発したのはかつらぎ町内の工房〈ゆらりファーム〉。起業したのは、町内在住の高校3年生(2024年4月時点)、城向(しろむかい)ゆらさんだ。〈和歌山県立紀北農芸高校〉に通う城向さんは昨年までソフトテニス部での活動に打ち込む普通の高校生だった。そんな彼女はなぜ、食品開発を始めようと思ったのだろう?ご本人に話をうかがった。
「この町で育てられた果物が大好きなんです。ご近所や親戚に農家さんが多くて、小さいころから柿をたくさんおすそ分けしてもらってきました。後になって、そのほとんどは出荷ができない規格外(※)の柿だと知りました」
(※)傷や色などの問題で、出荷基準を満たせなかった農作物のこと。
規格外作物の再利用は、和歌山県全体の課題でもある。温暖気候に恵まれた和歌山県では、みかん、柿、いちじくなどの果物が全国1位の収穫量を誇ってきた。一方、収穫量に比例して、わずかな傷や変色による規格外のフルーツも大量に生まれる。出荷ができない作物は基本的に、生産者さんが自分たちで食べることになる。
「食べきれずに余った柿は処分されるので、おいしいのにもったいないと思っていました。そこで、『学校で習ってきたことが役立つのでは?』とひらめいたんです」
城向さんは高校の「生産流通科・製造コース」で、規格外作物を用いた食品加工の技術を学んでいた。その知識を生かし、彼女は自分の工房「ゆらりファーム」を立ちあげることにした。活動内容は、かつらぎ町の農家さんから規格外作物を買い取り、食品加工をして販売することだ。
「起業の相談をしたとき、学校の先生には『卒業を待ってはどうか。やりたいことができる就職先もあるはずだよ』とアドバイスされました。でも、私はかつらぎ町のために自分で今すぐできることをしたかったんです」
父・英司さんが自宅の物置を改築し、加工場を用意してくれた。高校生では条件を満たせない衛生管理責任者の資格も、英司さんが代わりに取得した。両親は当面の資金援助を申し出たが、城向さんは「自分の夢なのに何もかも親にそろえてもらうのは違う」と言って断った。
2023年、城向さんが高校2年生の夏、クラウドファンディングで開業資金を募り、〈ゆらりファーム〉は開業した。家族や学校の先生、友だちのサポートもあり、9月にはすでに食品の試作が始まった。そして試行錯誤の末に、完成したのが「柿そうめん」と「柿ジャム」だった。これらの〈ゆらりファーム〉の商品は、今冬からかつらぎ町周辺の道の駅(※)やおみやげショップで販売されている。
〈ゆらりファーム〉にはスタートから大きな反響があった。特に、「柿ジャム」は今期の在庫がなくなるほどの人気になった。
「『おいしい』という声をたくさんいただいて、とても励みになっています。今挑戦しているのは、かつらぎ町のはっさくでつくる和紅茶とマーマレードです。まだ試作段階ですが、近日中に販売できるよう頑張っています」
城向さんは高校卒業後、〈ゆらりファーム〉に専念して事業拡大を目指すつもりだという。目標は、いつか〈ゆらりファーム〉で〈紀北農芸高校〉の生徒を実習生として受け入れること。
「かつらぎ町で一緒に働ける人を増やしていけたら」と城向さんは未来を見据える。果物のロスを減らし、地元の農業を盛りあげるために〈ゆらりファーム〉の挑戦は始まったばかりだ。
(※)〈ゆらりファーム〉の商品が買える道の駅はこちら↓↓↓
〈道の駅 くしがきの里〉
和歌山県伊都郡かつらぎ町滝53-1
公式サイト
〈道の駅 かつらぎ西〉
和歌山県伊都郡かつらぎ町笠田東1271ー28
公式サイト
〈道の駅 紀の川万葉の里〉
和歌山県伊都郡かつらぎ町窪487-2
公式サイト
関連記事