みちする

お買い物:
紀州人が生んだ果物・調味料・日用品

2023.12.19

紀州人(和歌山県で生まれ育った人)は、「積極的に新しい物事に取り組んでいこうとする気質を持つ」と言われている。まさに、県のシンボル(県章)でも表現されている「進取の気性」だ。長い年月改良を繰り返し丹精込めたかつらぎ町産の農作物や加工品、伝統にアイデアを積み重ねた使いやすい日用雑貨。それらが集まった〈くしがきの里〉は何気ない店内の様子からも、地元紀州の人々の強い思いを感じることができる道の駅だ。

柿・みかん

〈くしがきの里〉があるかつらぎ町では、柿やみかんなどの栽培が盛ん。特に、柿はかつらぎ町を代表する特産品だ。まろやかな甘さで人気の「刀根柿(とねがき)」、すっきりとした後味が印象的な種なしの「平核無柿(ひらたねなしがき)」など、さまざまな種類の柿が〈くしがきの里〉には並んでいる。

やわらかい食感と濃厚な甘みをそなえた和歌山発祥の新種「紀州てまり」。全国的に名前が知られる最高級の柿だ。

かつらぎ町の柿づくりの歴史は、16世紀末の安土桃山時代にまでさかのぼる。「和歌山県政史」の記述によれば、当時の伊都郡四郷村(現在のかつらぎ町)ではすでに柿の栽培と販売がなされていたという。そして明治40年、かつらぎ町の水田に、東京から取り寄せられた「富有柿(ふゆうがき)」の苗50本が植えられたことで、柿づくりはますます活性化。継続的に柿の移植が行われていき、昭和の終わりごろには町の産業の基幹をなすほどの作物になった。
その後、現代にいたるまで100年以上も改良を加えながら柿が育てられてきた。その成果として、かつらぎ町の柿はいずれもサイズが大きく、実がしっとりしている。何よりも、糖度20度を超えることもある甘みが特徴だ(一般的な柿は16度前後)。
柿にまつわる食文化も町内で発達。甘みを損なわない保存食である「干し柿」や、やわらかい食感の「あんぽ柿」などがつくられている。これらの柿の加工品は〈くしがきの里〉のおみやげとして、愛されてきた。

たくさんの柿を紐にくくりつけた状態の「つるし柿」も発見。これを軒先などに下げて干せば、甘い干し柿ができる。
江戸時代中期に生まれたとされる「あんぽ柿」。干し柿の一種だが、あえて水分を残しておりゼリーのような食感。

秋冬の〈くしがきの里〉で柿と人気を二分するフルーツが、みかん。和歌山県はみかんの生産量が全国一で、10月ごろにはもう早生品の収穫が始まる。秋の〈くしがきの里〉にも、県内ではポピュラーな「ゆら早生」が届けられる。これは早生品の中でも糖度が高くて甘いみかん。やがて、12月ごろには甘さも酸味もたっぷりの「有田みかん」が登場し、春先までの約半年にわたり〈くしがきの里〉を彩る。

秋に収穫されるみかんの中ではもっとも糖度が高いとされる「ゆら早生」。
ゼリーやジュースなど、みかんを原料にした食品もうれしい品揃え。
フルーツ甘酒や瓶詰め、ジュースセットなど、ギフト向けの詰め合わせが充実しているのも〈くしがきの里〉の特徴。

ほりにし

アウトドアスパイス「ほりにし」は2019年4月に発売されて以来、年間で約10万本が売れるヒット商品になった。販売元であるアウトドア専門店「Orange(オレンジ)」の運営会社はかつらぎ町内にあり、〈くしがきの里〉では地元のおみやげとして取り扱っている。
特集コーナーにはしょうゆや香味野菜のパウダーでつくられた万能の「ほりにし」のほか、さわやかな「レモン風味」、燻製の「ブラック」、刺激を強めた「辛口」、トリュフと塩を合わせた「プレミアム」などの多くの種類が並ぶ。かつらぎ町周辺にはキャンプ場もあるので、〈くしがきの里〉でカレーやバーベキューなどの食材と一緒に「ほりにし」を調達するキャンパーも多い。

「ほりにし」は普段の食卓でも強い味方だ。焼き魚やからあげなどのおかずに、さらにふりかけごはんにもおすすめ。

織物・日用雑貨

〈物産販売施設〉では、バッグやマフラーなどの織物・日用雑貨が目を引く。そして、その多くがかつらぎ町周辺の企業、生産者によって考案されたものだ。
たとえば、「高野口パイルファブリック」シリーズは、光沢感とやわらかい質感をあわせもつ「シール生地」が特徴。製造元の〈株式会社岡田織物〉はシール生地生産量が日本一の橋本市高野口で活動してきた企業だ。「匠の品質」「用の美」「地域の志」をテーマに、シール生地を広く応用しようと「高野口パイルファブリック」を生み出した。中小企業庁の「JAPANブランド育成支援事業」にも採択されているアイテムの中から、〈くしがきの里〉には普段使いしやすいバッグが集められている。

洗濯後も色が落ちにくい「高野口パイルファブリック」は耐久性に優れた製品。

紀の川市の〈きよ農園〉で開発された「farm mufler(ファームマフラー)」は、農作業をサポートする実用的なアイデア商品だ。一般的なフェイスタオルの約半分の軽さで、速乾性も抜群。作業中の汗拭き用に使った後ですぐ乾かせる点が、農家さんから好評を得ている。さらに、備長炭パウダーを糸に練りこんであるので、防虫効果もプラス。現場を知り尽くしている農園ならではの細かい着眼点が随所に光っている。

「farm mufler」はカラーバリエーションが多く、ファッション性も高い。

そのほか、かつらぎ町産を含む、和歌山県北部のおみやげも充実している。

柿の葉のこうばしさが酢飯に合う「柿の葉寿し」は四郷地区の郷土料理。鯖やしいたけ、卵など、いろいろな食材を味わえる。
紀州南高梅やはちみつ梅、しそ漬など、和歌山名物の梅干しも多彩なラインナップ。
「和歌山だいこん」の漬物(通称:「紀の川漬」)。きらず(乾燥おから)に漬けることであっさりした甘さになる。

〈くしがきの里〉の産品やおみやげはいずれも創意工夫に富んでおり、過去のものをより良くしようとする向上心に満ちている。果物は長い年月をかけて品種改良されてきており、全国的に知られるおいしさになった。ファブリックを中心とした便利な日用雑貨からは、ユーザーに寄り添って「悩みを解消してあげたい」という真摯な思いが伝わってくる。自分だけでなく、他人の幸せを願い、それを喜びと思う心。そんな紀州人の「進取の気性」は、かつらぎ町〈くしがきの里〉にしっかりと根を張っているようだ。

ページトップへ