駅の楽しみ方:
縄文時代を追体験
可能性広げる道の駅
2022.12.12
採れたての果実を手に入れようか。
それとも火を囲みゆっくり語り合おうか。
丘陵をまるごと活かし食や遊び、人が集い交流する人のくらしの原点が
描き出された和歌山・関西最大級の道の駅。
和歌山市東部の山林を抜けて阪和道を南へ。インターチェンジを降りると5分ほどで道の駅 四季の郷公園。地域に親しまれていた農業公園が2020年7月に道の駅として生まれ変わり、今年4月にリニューアルオープン。
エントランスのスローブの先に山東地域が誇る竹林、広葉樹に包まれた山小屋のような建物がのんびり屋根を広げている。
「“Be Wild”が四季の郷公園のテーマです」
と教えてくれるのは、副駅長を務める李野高康さん。
「人が自然と一緒に生きていた縄文時代って、1万年以上も続いたんですよ。その年月を生き抜けるだけの知恵が、縄文人には備わっていたはず。そんな体験の楽しさを表しているのが『FOOD HUNTER PARK』という愛称です」
和歌山のダイナミックな自然を満喫しながら、縄文人のくらし知恵を追体験。そんな四季の郷公園内を案内いただいた。
「水の市場」は地元和歌山や山東地域の食材やそこから生まれた調味料、生活民芸品など、1,300アイテムもの商品を販売。近隣の農家さんが毎朝持ってくる野菜はどれも採れたて。特産のみかんや柿など農産物のラベルには生産者のみなさんの名前とかわいい似顔絵が。
李野さん、なぜイラストなんですか?
「地元の農家のみなさんは、写真は照れくさいからとおっしゃって。だから絵にしてみました。かわいらしいでしょ?」
加工品は地元の食材を活かしたものばかり。色とりどりの酢や味噌、醤油といった発酵食品もずらり。さすが醤油発祥の地、和歌山と言える売り場。
地域食材レストラン「火の食堂」は、レストランのある炊所(かしぎしょ)とカフェの焙所(あぶりしょ)、ベーカリーの焼所(くべしょ)からなる空間。公園の母体である農業公園時代の木造の建物が温かくスタイリッシュにリノベーションされている。
「火の食堂」から外のテラスへ出ると、バーベキュー場「炎の囲炉裏」。
竹林を背に芝生が広がり、木々の間にはタープが張られている。その中心に直径3メートルものストーン・サークルのような石の囲炉裏が。休日には薪がくべられ、サークルの中心に炎が上がる。
「石を丸く置いただけの空間なのに、火があると人が自然に集まってくるんです。石に腰をおろしてマシュマロや市場の食材を焼いたり、コーヒーを飲みながらゆっくり話したり」
李野さんが火をおこすと、囲炉裏が懐かしくほっとする空間になっていく。
バーベキューは手ぶらでやってきてもセットメニューがあり、それぞれのサイトのグリルで楽しめる。肉やソーセージは「水の市場」で買った食材を自分たちで調理できる。
縄文の人たちも野に出て採った食べ物をこうして火にくべたのか。テントを持ち込めば1日に限定2組で宿泊も可能。満点の夜空を見上げて、縄文時代から変わらない景色に思いをめぐらせるのは、宿泊者の特権。
ここからは公園の全体像をご紹介。四季の郷公園の面積は25.5ヘクタール。ダイナミックな地形を活かした園内は隅々まで自然を楽しめる。
丘に登るとピクニック・スポット「四季の広場」とそこを流れる「四季の小川」が。ドッグランもあり、李野さんによるとお客さんの3割はワンちゃんと一緒にやって来るとか。
公園の丘陵の頂上には「見晴らしの丘」。展望台から四季の郷公園を見下ろす形でパノラマを体感できる。丘の斜面を活かしたアスレチック施設の遊具は、農業公園時代の設備をリノベーションして再配置されたもの。さらに園内には土手を活かした「花のすべり台」も新設。春にはツツジが咲き、その中を滑っていけるのだとか。
広大な園内を巡っていると、進むごとに、木々と土、どこからか煮炊きをする煙の香り。「ここでなにをしようか、どう遊ぼうか」とワクワクしていた子ども時代の気持ちに帰っていく。四季の郷公園を一周巡って、“Be Wild(野生を楽しめ)”という公園のテーマの意味がわかってきた。